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新幹線・栗東新駅、正式に中止…地権者補償など焦点に

建設中止が決まった新幹線新駅の予定地。周辺では土地区画整理事業(手前)の事後処理が課題として残る<滋賀県栗東市で、本社ヘリから)

 滋賀県栗東市の新幹線新駅問題で、建設の是非を最終協議する新駅設置促進協議会の正副会長会議(嘉田由紀子知事と6市長で構成)が24日、同県庁で開かれ、嘉田知事が改めて中止を提案、建設を目指す国松正一栗東市長が応じず、協議は物別れに終わった。地元の結論をまとめる今月末の期限までに合意が成立する可能性はなくなり、20年来の新駅事業は正式に中止が決まった。自治体が設置を求めた「請願駅」が着工後に中止されるのは初めて。JR東海も中止を受け入れるとみられる。

 新駅は1988年、栗東町(当時)などが設置促進協議会を発足させ、事業費約248億円のうち、県など地元が約238億円を負担し、2006年5月に着工。12年開業を目指したが、06年7月に建設凍結を掲げた嘉田知事が初当選し、工事は中断していた。

 今後の焦点は、予定地周辺で進められていた土地区画整理事業の事後処理に移り、土地を提供した地権者への補償などについて県や栗東市が対応を迫られる。

 ■ 「今さら」憤る地権者 ■

 滋賀県栗東市東海道新幹線の新駅をつくる計画が走り出してから約20年。様々な民意に揺れたその計画は〈目的地〉にたどり着かないまま24日、中止が決まった。新駅に伴う区画整理に夢を描いて土地を提供した地権者からは、「協力してきたのに納得できない」と憤りの声が上がった。

 県や栗東市などは4月下旬、JR東海側との間で、今月末までに地元で合意できない場合、工事協定などを破棄するとの覚書を締結していた。この日午後4時半から県庁で始まった正副会長会議でも、嘉田由紀子知事は覚書の内容を淡々と説明。建設を推進する国松正一栗東市長は「了としない」と厳しい表情で中止に応じない考えを示し、会議は40分で終わった。


 新駅設置の区画整理事業に応じた地権者は、企業を含めて238に上り、県や市に説得され、先祖から受け継いだ土地の仮換地に応じた農家も。栗東市下鈎(しもまがり)、農業中村勘治さん(63)は、新駅の建設予定地に決まった1996年、「わしらは請願した覚えはない」と反対した経緯がある。

 だが、2003年の地元説明会で、県が「財政難だが、新駅の予算は別枠を作り、県として積極的にイニシアチブをとる」と明言したため、「そこまでめどが立っているなら」と約1200平方メートルの農地の提供に応じた。

 農地が自分の手に戻ってきても工事で地盤が緩み、耕作にはすぐに使えない。「今さらどうすればいいのか……」。中村さんは怒りを抑えきれない。

 約80人の地権者を抱える同市の蜂屋自治会。会長の中井建夫さん(64)は、「新駅で、周囲は発展する」と信じ、98年から住民の説得にあたった。

 県は現在、新駅建設に代わる地域活性化策を模索しているが、中井さんは「新幹線の駅という公共施設に貢献することで、みんなが納得した。代替案が出たとしても、もう自治会をようまとめられん」と嘆く。

 この日の正副会長会議終了後、嘉田知事は「今後は土地区画整理事業が課題。誠意をもって対応したい」と述べ、国松市長は「約束を果たせないことを重く受け止め、市民におわびしたい」と陳謝した。

(2007年10月25日 読売新聞)